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震災遺児を思う

 

橋 本 重 雄
(大阪市生野区)

 

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平成7年1月17日、犠牲者 5,500余名を出 した阪神・淡路大地震 は、史上最大の直下型 地震でありました。犠牲となられた方々のご 冥福をお祈り致します。震災後1年半が経過しましたが、繁華街では百貨店やスーパーが復興し、各商店も再開し、明るいニュースが聞かれ反面、数多くの人々が仮設住宅等に居住されて不自由な生活をしておられ、8月20日現在、区民センターや公園など計23か所に 356人が避難生活をしておられる状況を聞く時に、1日も早く元の活気のある平和な町に復興される事を心から願うものであります。
一瞬のうちに両親や片親を亡くした、あしなが育英会の調査では 641名(育英会が独自にボランティアを通じて調査した、大学生も含めた少年の数だそうです)。兵庫県が把握している数では 400名(震災時、県下に住民票があり見舞金等を受け取った高校生迄の少年の数だそうです)の多数の震災遺児が生まれました。そのほとんどは、親戚や知人に引き取られ、又施設に収容された事を報道で知りました。私も母子家庭に育ちました。
戦中、戦後の動乱、混迷の時代でしたので、生活のために進学を断念したり、転職の差別や日常の生活の中でもいじめやいやがらせ等の色々な体験をしておりましたので、この平和な世の中で、昨夜まで一家団欒で過ごした後、一瞬のうちに遺児となった方々の事は他人事とは思えません。
被災地の自治体の発表する都市計画・それに反論する市民の声とか、商店街の再開のニ ュース、又仮設住宅での痛ましい老人の孤独死とか、生活の状況等が報道されております が、わが国の21世紀を背負うこれら遺児達の 事が殆ど報じられないのはどうしてでしょうか。多数の報道機関の中で、1社だけでも取り扱ってくれてもいいのではないかと思うと、誠に残念であり淋しい限りであります。
戦後50年余、我が国は国民の努力によって世界有数の経済大国となりました。
福祉施策の面でも十分とは言えませんが、かなり充実して参りました。この遺児達が成 人するまで、国・県・各市町村が責任を持っていろんな施策を講じて欲しいと思います。それが我々大人の責任ではないでしょうか。被災地の子供達には、不眠や悪夢、わずかな 刺激での反応などの後遺症が現れていると言われています。こうした症状が顕著になると専門医の治療が必要になって参ります。特に瞬時に親を失った精神的なショックは心の中にいつまでも残っていると思います。経済的な問題は、今回政府があの住専処理に使った 巨額の税金の何十分の一もあれば解決できるでしょうが、心のケアについては、長期的な 医療機関(専門医等)も含めた諸施策が必要ではないでしょうか。

 

 

 

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